時効のあれこれ

時効の中断



「おいおい!その話はもう時効だよ。」などと、都合の悪い話になると持ち出すのがこの「時効」でアリます。

ところで、時効と一口に言っても民事時効、刑事時効、さらに公訴時効などいろいろとあります。その中で、私たちの日常生活において最も身近なものは、民事時効ではないでしょうか。

もし、刑事時効が身近な問題となっている方は、警察関係かその対極にあるお方と存じますが...。

なんでタコが出るんだ?


ここではその身近な民事時効(というよりは、それ以外は余り得手でない)について少し触れてみたいと思います。

民事時効には2種類あって、そのひとつは「消滅時効」です。
これは一定期間の経過により、権利(裏返せば義務)が消滅してしまうものです。たとえば、飲み食いのツケを1年間払わないでいると、消滅時効にかかり、飲食代金を支払わずに済むのです。また、借りた金は10年たてば返さずに済むのです。

消滅時効に必要な経過期間は、消滅する権利により異なり、それは法律に規定されています(民法167条以下、商法522条など)。

消滅時効に似たものに「除斥(じょせき)」というものがありますが、ややこしくなるので、とりあえずパスします。


もうひとつの民事時効は、「取得時効」です。こちらのほうは、一定期間の経過により、権利を取得するものです。たとえば、他人の土地を自分の土地と信じ込んで、なおかつ、そう信じ込んだことに過失がなかったときは、10年の占有期間経過によりその土地を取得できるのです。

もし、他人の土地であることを知っていたり、通常知っていなければならない場合(知らなかったことに過失があった場合)は、20年が必要です(民法162条以下)。

なお、動産については、「善意取得(即時取得)」という規定がありますが、とりあえずこれもパスします。

ちなみに、「知っていること」を法律用語で「悪意」といいます。本人に悪意などなくても、単に知っているだけで「悪意者」呼ばわりされるのです(Windows 画面で、不正な処理をしたと指摘されるのと同じように心外ではありますが...)。


他人の所有物を時効により取得した場合は、その他人の所有権は消滅時効にかかったのでは、と考えることができるかも知れませんが、法律上の解釈としては、取得時効の反射効果として所有権が失われたものとしてとらえられています。

所有権が移転したという考え方もありますが、一般的には時効は原始取得とされています。原始取得とはなんぞや?という疑問には、...えーと、パスしておきます。

通行地役(ちえき)権や賃借権なども時効取得できますが、この場合は消滅する権利というものはありません。


ところで、消滅時効、取得時効のいずれも、当事者で争いとなったときに、「それは時効ですよ」と主張しなければ、効果がない、言い換えれば、裁判になっても負けるということです。当事者が言わないうちに、裁判官が「時効になっているのではないですか?」などと言うことは絶対ありません。この時効の主張をすることを「時効を援用する」といいます。


なにか食い得、取り得のような話になってしまいましたが、続きは「時効の中断」 で。


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